2025年4月から1年かけて、物理屋向けに摂動論的な場の量子論の基礎を解説する授業をします!内容も資料もさらにブラッシュアップされ、より充実したものとなっています。
古典物理学は質点と場の両輪からなっています。質点の理論は、100年前に量子力学という名前でアップデートされました。この量子力学のアイデアを、場の理論についても適用しようとして生まれたのが場の量子論(Quantum Field Theory)です。量子力学は数十年でほぼ完成に至ったのに対し、場の量子論の枠組みの研究は100年経てどもいまだに発展の途上にあります。
この授業では、オーソドックスな摂動論的場の量子論について、1年間かけて標準的な事項を解説します。舞台は4次元時空が中心ですが、時折1次元や2次元、3次元の面白いトピックも織り交ぜていきます。また代数トポロジーや微分幾何学などの現代数学も随所で現れます。詳しくは以下をご覧ください。
場の量子論はセーブポイントまでが毎度長く、なかなか勉強がたいへんです。この授業では、何が仮定され、何が定義で、何が示すべき式なのかをきちんと気をつけて丁寧に進んでいきます。板書と授業の録画は全て共有されますし、Texの資料(現在200ページ程度)には一つ一つの用語の定義や使い道、詳細な計算などが記されています。授業を2周している間に、計算が大幅にすっきりしたところも結構あります。
毎週土曜13:00-14:30@zoom.
月4回(土曜が5回ある月は1回お休み).
期間中はDiscordで連絡や資料・録画共有,質問対応など。Texで書いた資料を配布します。授業はgoodnotesに手書きで板書するスタイルで行います。
毎日いつでも,授業内容に関する質問はもちろん,一旦授業に関係ない質問もOK.普段の学習で困ったことや気になることがあれば,ぜひなんでも聞いてください. 授業内はもちろん授業終了後も質問対応の時間を作ります(先生が授業終わったあともしばらく教室に残っているノリ)。
また2025年度から、月1回まで、20分の個別面談を実施します! より一層充実したフォロー・サポートを行なっていければと思っています。
質点の解析力学、電磁気学、 特殊相対論、量子力学など。場の解析力学については授業で解説します。
数学の方も線形代数、ベクトル解析、フーリエ解析、複素解析などの基本的な計算は仮定します。
表現論などは随時必要事項を説明します。
スカラー場は座標変換で不変であり、成分数も少ないため、クセがなく最も基本的で扱いやすい場です。素粒子理論では、主にヒッグス粒子などスピンがゼロの粒子を記述するのに用いられます。
まずは量子力学や特殊相対論、物理数学などの必要事項のおさらいから。
最も基本的な場であるスカラー場を通じて、場の運動方程式や場の解析力学、正準量子化、LSZ還元公式など場の量子論の出発点となる事項を解説します。
古典論では全く異なる存在であった場と粒子は、場の量子論ではフーリエ変換を通じて互いに移り合うことになります。
より実用的な量子化である経路積分量子化を通じて、n点グリーン関数やWickの公式、ファインマンダイアグラム、有効作用など、摂動論的場の量子論の基本事項を解説します。
また、ナイーブなループ計算は発散してしまうことを見て、6月の繰り込み理論につなげます。
ループの発散は、歴史的にも学者を苦しめた問題でした。この困難は「そもそも場の量子論において場が持つ質量とは何か?」という問いに答えることで解決されます。
ここまでで、スタンダードな場の量子論で行われるべき手続きが一通り済んだことになります。あとはこの過程をスピノル場やゲージ場にも適用していくだけです。
例に漏れず、僕も繰り込み理論が何をやっているのか理解するのに随分時間がかかりました。
時空上の座標変換に対して奇妙な振る舞いをする場です。また掛け算が反交換性を持つなど、スカラー場やゲージ場などのボソン場とは異なる性質を持ちます。クリフォード代数やスピン群など、物理の文献ではやや軽めに語られるところもある程度きちんと追っていきます。素粒子理論では、電子やニュートリノなどスピンが1/2のフェルミオンを表します。
まずはローレンツ群SO(1,3)とその二重被覆群であるスピン群Spin(1,3)について、それからクリフォード代数など、スピノル場を議論する上必要になる数学的事項(表現論)について解説します。4次元ミンコフスキー時空におけるさまざまなスピノル(ディラック/マヨラナ/ワイル)を紹介します。また8月に備えてディラック方程式の古典論もここで取り扱います。
スピノル場の正準量子化と経路積分量子化について解説します。また1,2次元の場合について、超対称量子力学や超対称シグマ模型とそれらの広がりについてもここで紹介する予定です。
量子電磁力学(QED)は、粒子物理学の最も基本的な力の一つである電磁相互作用を場の量子論で記述しようというものです。QEDは、光(光子)と電荷を持つ粒子(例えば電子)がどのように相互作用するかを記述し、この過程で発生する現象の正確な予測を可能にします。この理論は、物理学における最も正確な予測を提供し、日常生活の技術から最先端の実験物理学まで、幅広い応用を持っています。QEDを学ぶことは、量子世界の奥深い理解への第一歩となります。
まずは、古典電磁気学を特殊相対論、そしてU(1)ゲージ理論の言葉で書き直します(一般相対論のようなアイデア!)。そしてU(1)ゲージ場の量子化について、正準形式と経路積分形式両方の観点から解説します。
ゲージ場のファインマンダイアグラムを求め、ツリーレベルでの反応(コンプトン散乱やバーバ散乱)などの計算をします。
1-loopの計算とともにくりこみ理論を復習し、繰り込み群方程式や、高エネルギーでQEDが破綻することを解説します。g-2因子やラムシフトなどの計算も追って、1-loopレベルでもよく実験結果と合うことを確かめます。
非可換ゲージ理論は、一般相対性理論(重力)と同じような思想で強い相互作用や弱い相互作用を記述します。そこにはリー群・リー代数の表現論や主束の幾何学などの数学が用いられます。この最後の4ヶ月では、必要な数学の準備をした上で非可換ゲージ理論の基礎を学び、1-loopベータ関数を計算してQCDの漸近的自由性を示します。またこの1年間で学んだことが、標準模型という形でまとめられることを見ていきます。
リー群やリー代数の表現論(ヤング図形によるハドロンの分類やディンキン図形)、主束の幾何学(共変微分や曲率)、Yang-Mills汎函数やChern-Simons汎函数など、非可換ゲージ理論の古典論をなす数学・物理学について解説します。非可換ゲージ理論が現代数学でも低次元トポロジーなどで用いられており、さまざまな成果を上げていることも紹介します!
ゴースト場を用いたBRST量子化や、Ward-Takahashi恒等式、ゲージ場やゴースト場のファインマンダイアグラムなど、非可換ゲージ対称性がある系の量子化について基礎的な事項と計算を解説します。
くりこみ理論を非可換ゲージ理論にも適用し、ベータ関数の1-loop計算によってQCDが漸近的自由性を持つことを示します。ベータ関数の計算においては、ファインマンダイアグラムを足し上げるという標準的な方法のほかに、藤川の方法を用いたワイルアノマリーとしての計算も紹介します。
これまで学んだことの集大成として標準模型について解説します!トピックとしては自発的対称性の破れやCPT対称性、ワインバーグ・サラム理論などです。また、標準模型が抱える問題点についても言及し
超対称性を持った場の量子論や超弦理論がいかにそれらを克服しようとしているかについても紹介できればと思っています。この授業の先にあるトピックを参加者の興味に応じて解説します。
お問い合わせも右のボタンからお願いいたします。
場の量子論の授業についての想定質問と回答を載せておきます。上に書いたものを再び載せているところもあります。
A1: 物理では質点の力学/解析力学/古典電磁気学/量子力学/特殊相対論など、また数学では線形代数/ベクトル解析/フーリエ解析/複素解析の基本的な知識や計算は仮定します。気になることがありましたらお気軽にご相談ください。
A2: 参加は月毎でお願いいたします。
A3: Stripeという外部の決済サービスを通じて、クレジットカードでの自動サブスクリプションにのみ対応しています。申し訳ありませんが、月別の手動でのお支払いや、銀行振込や電子マネー等には対応していません。
A4: 参加者は専用のDiscordチャンネルでいつでも質問できます。また毎回授業中や授業後に質問の時間を設けます。演習問題を解いてみたのでフィードバックが欲しい、なども気軽に聞いてください。
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