9/24(日)16時(予定)より、この授業についてのライブ配信を行います!(押せばリンクが開きます)
田邊さんと2人で、授業への向き合い方や意気込みなどについて熱く語っていきます🔥
2023年10月から2024年3月の半年間、理論物理学で用いられる基礎的な幾何学の授業をします!
講師は田邊真郷さんが務めます。詳細は下記の講師紹介をご覧ください。
田邊真郷(たなべ まさと)
所属(2023年9月現在):北海道大学 大学院理学院数学専攻 博士後期課程1年
リンク: Twitter(X) / HP / YouTube(もなくゎ)
皆様へ
はじめまして!私は純粋数学の人間で、幾何学(特にトポロジー・特異点論)の勉強・研究をしています。数理物理チャンネルさんとは、修士課程の頃に知り合って以降、お互いに数学・物理の情報交換をさせてもらっています。
さて、今回の授業は「物理の人が数学書を開くためのハードルを下げる」ということを目標に企画されました。数学と物理は密接な関係を持って影響し合っているにも拘らず、背景や言語をすり合わせる際に"変な"ところで多大なコストを要する場面が多いと感じています。しかし、互いの共通部分が認識できてくると、加速的に視野が広がって理解も深まってくるものだとも思います。
今回の授業ではDiscordも活用して、ある種のコミュニティを形成し、議論・交流を深めたいと思っています。僕と数理物理チャンネルさんだけでなく様々な方が参加して、たくさんの情報交換ができれば幸いです。
「まっすぐな/線型な」幾何の舞台として、まずはベクトル空間を扱います。前半部では線型代数の諸概念(直和・商・双対・テンソル積etc)を紹介しつつ、数学的な言葉遣いに慣れていきます。後半部では、物理によく登場する付加的構造(ユークリッド計量・ミンコフスキ計量・複素構造etc)を紹介します。この月で扱う内容を隈なく「非線型化」することが、今後の内容の大半を占めます。
先月の内容を足場にして、「曲がった/非線形な」幾何の舞台である空間概念:多様体を導入します。多様体とはベクトル空間を非線型に貼り合わせて出来る空間のことで、身近な例として球面・トーラス(浮き輪)があります。こういった空間概念は物理においても、相空間 (phase space) や我々の棲む世界自体のモデル --- まっすぐなℝ^3ではなく、非自明な高次元多様体 --- として自然に現れます。
(つづく)だい
そのような空間上で、どのように幾何学を展開するかを学びます。たとえばℝ^n上では、微積分(特に図形の計量)・線型代数が使えましたし、様々な付加構造を考えられました。これらの概念を多様体上に移植するために、多様体の「線型近似」である接空間を導入します。 後半では、物理的にも重要な位置を占める多様体としてLie群を紹介します。多様体の頻出例を網羅し、各々の性格に慣れ親しんでいきます。
束 (bundle) は、空間の各点に定まる何かしらの空間を束ねて出来る大きな空間で、物理的には「場」を扱うための器として導入されます。典型例としては接束(多様体上で接空間を束ねたもの)があり、この中に接ベクトル場の"グラフ"が描かれます。このような概念はℝ^nなどの上であれば不要ですが、非自明な多様体では --- 2次元球面ですら!本質的に束を考える必要が生じます。この月は、接束を首めとして様々な束を紹介していきます。
多様体や束を解析的に測る"かたい"道具として、計量・接続(=共変微分、平行移動)・曲率といった概念たちを導入します。計量を用いると空間上に"ものさし"を定め、曲がった空間上で文字通り図形の計量をすることができます。また、接続はベクトル場(一般にテンソル場)を"微分"し、曲率を定義するために必要な構造です。これらの概念を以て、空間の歪みを定量的に取り扱います。授業では低次元の曲線・曲面論を足場として、視覚的な説明も心掛けます。
多様体や束を代数的に測る"やわらかい"道具として、基本群・ホモロジー・コホモロジーを導入します。これらを用いると、様々な空間を大らかに識別できる他、「零点を持たないベクトル場が取れるか」といった問題をある意味簡単に解くことができます。その計算は組合せ的な側面を持っている一方で、先月の微分幾何的な情報(空間の歪み・曲がり具合)とも強い結び付きを持ちます。最後は時間の許す限り、その面白さも紹介したいと思います。
日曜日 13:00-15:00(終了時刻は目安)
毎月4回(うち3回は田邊が授業、1回はフォローアップやディスカッションなど)
DiscordおよびZoomで諸連絡・授業・質問対応を行います。議論・交流の場にもお使いいただけます。
授業は全編録画し、講義に使用した板書も共有します。
講師の田邊と数理物理チャンネルが共同で作成する授業ノートを配布します。
(随時、毎授業の内容+補足を盛り込んでいきます。)
前提知識について:高校数学 + 大学初年度の微積分・線型代数(の計算面)はある程度仮定して進める予定です。
微積分は極値問題・重積分の計算、線型代数は固有値問題・対角化辺りまでを想定しています。
(もちろん、不明点があれば適宜ご質問ください。)
みなさんご存知のように、田邊さんの板書は非常に見やすく綺麗ですし、また議論の際にも適切な距離感で対応してくださる方です。いい授業になると私は確信しています。
単に数学的な定義や定理を紹介するだけでなく、「物理的にどういう意味を持つのか」あるいは「物理のどういうところで用いられるのか」という物理的な視点も盛り込んでいきます。特に場の量子論や弦理論などの観点からたくさんコメントしていきたいと思っています。
そのために、4回の授業のうち1回は私が物理の話を共有する回(フォローアップ含む)にしたいと思っています。ディスコード上でもたくさん議論させてもらえたら嬉しいです。
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